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 彼が好きなもの。
 ラーメン。
 嫌いなもの。
 インスタントラーメンの待ち時間3分。


 じゃあ、チョコレートは?

年に一度の…

 甘いものが好きかどうかわからなかったから、一口サイズの小さなハートにしてみた。
 そのかわり、数はいっぱい。
 ビターにミルク、白にピンクに緑色。ナッツにフルーツ。種類もいろいろ揃えてみた。
 お母さんに味見をしてもらったから、おいしくないことはない、と、思う。
 できたチョコを入れるのは、レースペーパーを敷いた淡いクリーム色の箱。
 かけるリボンは濃い目のオレンジ。
 揺れても中身が壊れないようにクッション素材を敷き詰めて、ひとつずつ入れていく。
 ハートのチョコが壊れないように、そーっと、そーっと。



 ふたをして、リボンをかけて、ハートマークのシールで止めた。
 いつもは持たないカバンの底に、いちばん始めそっと入れた。



 それから台所に戻って、チョコクッキーを焼く。
 チームメイトと担当上忍、それに女友達に渡すため。
 ちょっと手抜きに思えるけれど、でもそれは、それだけ彼に渡すのは特別ということだから。
 クッキー用の袋とリボンは全部同じ。
 中身の量も同じくらい。
 だって、みんな同じだから。
 違うのは、彼だけだから。


 しっかり冷ましたクッキーを、そっとチョコの上に置く。
 外から箱が見えないように。
 覗いてもわからないように。


 たくさんのクッキーと、たった一つのチョコで、ぱんぱんに膨れたカバン。


 「今年こそ、渡せますように」


 ふとんの中で、そっと呟いた。

END

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