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スイートポテトを作ろう


 両手いっぱいのサツマイモを抱えて、ナルトは悩んでいた。
 大量すぎて、貰ったは良いが、量が半端ではないのだ。
 焼いもにするにしても一人では限度がある。
 一緒に貰ったヒナタやチョウジにはそんな悩みはないのだろう、ふたりとも笑顔がまぶしい。
 しかし、大家族というと語弊があるが、親戚一同揃えばかなりの人数になるヒナタや、ひとりで十人前は軽くいけるチョウジならともかく、一人暮らしで食欲も人並みのナルトには少々どころではなく多いのだ。
「うーん……」
 7班の仲間に分けるにも彼らも同じように貰っている。
 そうなれば、残るはイルカと三代目なのだが、イルカも一人暮らしだからそれほど渡せない。三代目なら貰ってくれるだろうが、やはりかなりの老齢なのでそれほど渡せるわけもなく。
「…ど、…どうかした、の?」
 頬を赤らめたヒナタが聞いてきた。
「イモ。どうしよう?」
 少し迷ったが、背に腹は変えられない。
 真剣に困ってますと顔に書いて、ナルトはヒナタに泣きついた。


 ナルトの悩みはヒナタの提案で解消された。


 次の日、ナルトとヒナタはナルトの家の台所に立っていた。
 本日、新人下忍3班ともに休みで、その休みを利用して、朝からナルトはヒナタと一緒にサツマイモ消費作戦をはじめようとしていているのだった。
 調理器具を出してきたナルトはヒナタの姿を見て感動する。
「すっげー可愛いってばよ…」
 ヒナタは自宅から持ってきたエプロンを身に付け、恥ずかしそうに俯く。
 フリルのついた女の子らしいエプロン。淡いピンクの花柄がヒナタの可憐さを引き立てていた。
 対してナルトは飾り気の無い青の無地。男物としては標準的な物だ。
 そんなふたりがキッチンで並んでお菓子作りをしようというのだ。
「オレたちって、なんか、新婚みたいだってば…」
 自分の言葉に照れて、頬を掻くナルト。
 紅潮していた顔をさらに真っ赤にして俯くヒナタ。
 しばし無言の空間。
「オレ、ヒナタに相談してホントによかったってばよ」
 いろんな意味で自分の行動が正解だったと、内心自画自賛。
 相談に乗ってくれて、手伝ってくれて、その上こんなに可愛い姿を見せてくれたヒナタにたくさんの感謝。
 ナルトはほくほくと新婚気分で準備を続けた。

 本日の作成物の名前は『スイートポテト』。
 サツマイモを使ったものでは最も有名だろう洋菓子である。
「タッマゴッと生クリぃーム〜」
 歌を口ずさむように音程をつけつつ、ナルトは一人用の小さな冷蔵庫から封の開いていない牛乳と卵のパックを取り出す。
 日付はキチンと確認済み。
「あっ、バニラエッセンスは、持ってきた、から……」
 ヒナタが女の子らしいポーチから小さな瓶を取り出す。
「そうそう、それってなんなんだってば?」
 ヒナタの出した瓶をしげしげと見つめ、ナルトは昨日から疑問に思っていたことを口に出す。
 昨日、必要な材料を聞いた時に出てきた名前であるが、皆目見当がつかなかったもので、その時は、ヒナタが持ってきてくれるというのでその時に聞こうと思っていたのだ。
「ええとね、バニラエッセンスって言って、甘い香りが、するの…。…それでね、香りをね、つけるためのもの、なの……」
「ふーん」
 瓶をじろじろと見たりつついたりするナルトを見て、ヒナタはくすりと笑った。
「あ、あのね。早く作り始めないと、お昼に間に合わないと、思うの…」
「そうだってば。急ごう!!」
 時計を見ると10時前。
 これから作って持っていくなら、早く作り終わって悪いことはない。
 ナルトはヒナタから教えてもらいながら初めてのスイートポテトを作り始めた。


 場所は変わって、木の葉の里の第7演習場。
 上忍マイト・ガイ率いる通称ガイ班は1対1で体術訓練をしていた。
「リーもネジもテンテンもガイ先生も、がんばってるかってばよー?」
 突然の大声に、相手の動きにだけ集中して対峙していたネジとリーがこけた。
「な、何事ですか!?」
 立ち直って顔を向けたリーは、ナルトとヒナタが歩いてくる姿をみつけた。
 ふたりとも演習場には場違いな私服で、見たところ忍具のひとつも身に付けていない。
「お前ら、真面目すぎだってば。もう昼だってばよ?」
 丁寧にガイ上忍に挨拶するヒナタと、軽い挨拶で通り過ぎてリーとネジの元に直行するナルト。
「おお、お前ら青春してるかー?」
 歯をきらりと光らせたガイに、ヒナタが赤くなる。
「で、どうなさったんですか、ヒナタ様」
 ようやく立ち直ることのできたネジが、ナルトを無視してヒナタに聞く。
「あ、あの、昨日、イモ掘りの任務だったから、お礼に……」
 ヒナタがガイ上忍に箱を渡す。
「ああ、アレやってきたんだ。どうだった?」
 訓練が一時中止になったと判断し、テンテンが面白そうに近寄ってきた。
「もちろん、オレたちが勝ったてばよ!!」
 ニシシと笑うナルトに、ヒナタも同意する。
「それで、いっぱい貰ったから、お礼、しようと、思って……」
「そう、ですか。お役に立てたのなら良かったです」
 ネジが堅苦しく喜ぶと、リーとテンテンも口々に良かったねといってくれる。
「お前ら、青春してるなー!!」
 何をしてそう言うのか定かではないが、それを見たガイ上忍はなぜか感動していた。


 ナルトとヒナタの作ったスイートポテトは好評で、ふたりはほっとして、嬉しそうに笑った。
 ガイ班と昼食を一緒に摂ったあと、一緒に訓練をと誘うガイに断って、ふたりは演習場を後にした。


 その後、手をつないだ可愛いカップルが任務受付のイルカのもとを訪れることになる。




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