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  燃えるような情熱の赤。
 女の子らしい可愛いピンク。
 華やかなカンジでオレンジ。
 元気を表現して黄色。
 癒し系のやさしい緑。
 それともクールに青か水色。


 リボンひとつを選ぶにも慎重に慎重を重ねて。
 だって、年に一度のバレンタインデーなのだから。


決戦前夜


 リボンはオーソドックスに赤かな?
 イメージ的には黄色なんだけど。
 おひさまの光、タンポポの色。
 でも、駄目よね。
 黄色じゃなんだか義理っぽく見えるもの。


 こう見えて、料理は得意じゃないのよね。
 だから、本命チョコは吟味して選んだ一番おいしい店の物。
 チョコをつつむ包装紙は、白地に銀で店のロゴが入ってる。
 だから余計にリボンは重要。
 私が選んだ証だから。


 箱に当てては取替え、また当てては取替え…。
 チョコの箱の横には、駄目だしをくらったリボンの山が出来ていた。
「ああ、もう、どうしよ〜」
 風呂上りにキレイに梳かした髪を気にもせず、がしがしと頭を掻く。
 決まらない。
 まったくもって、決まらない。
 なにって、チョコにかけるためのリボンが。
「なんでかなー」
 どれもこれも、イメージに合わない。
 チョコを買った店で、店員がつけようとしていたリボンが気に入らなかったから、断った。
 行きつけのショップで、チョコに似合うリボンを探して見つからず、適当にキレイなリボンをいろいろ買ってきた。
 帰り道でリボンを見かけると、立ち寄って買い足した。
 たくさん、たくさん、買ったあげく、どれもこれもが気に入らない。
 リボンの山をすくい上げて、天井に向かって放り投げた。
 ひらひらと頭に降っていくるリボンを見上げて、ため息が漏れた。
「もうっ。 バレンタインは明日なのに…」
 時計を見て、もう一度ため息。
 日付が変わるまで、あと1時間を切っていた。


 チョコに添えるカードはもう出来ている。
 ホントはチョコと一緒に告白するつもりだったのだけど、予定を調べて無理だとわかったから。
 無いよりはマシ。あって悪いことはないよねってことで。
 チョコの箱だけじゃ持ち歩きにくいかもって考えて、小さなサイズの紙バッグも用意した。
 もちろん、明日の服はばっちり、小物も揃えてちゃんと決まっている。
 だから、あとはチョコのリボンだけ。
「こんなことなら、もっと前に買っておくんだった…」
 できるだけ賞味期限を、なんて考えるんじゃなかった。
 うぅーと唸りながら頭を振って、頭に乗ったリボンを振り落とした。


「あ、れ?」
 飛び散ったリボンをかき集めてると目にとまった、それ。
 クローゼットの奥にしまいこんでいた小さな小箱。
「これって確か…」
 ホコリが飛ばないようにそっと払って、クローゼットから取り出した。
 手のひらに収まる紙の箱をそっと開けると、1本のリボン。
「やっぱり」
 下忍になって初めての給料で買ったリボン。
 幅広の真っ青な天鵞絨風の地に金のラインが両端に入っている。
 店で一目ぼれして購入したのだが、どうにももったいなくて使えなかったもの。
 大事に仕舞い込んで、そのまますっかり忘れてしまっていたもの。
 箱に当ててみると、イメージ通りとはいかないけれど、かなりしっくりとしている。
 少なくとも、手持ちのリボンの中で一番良い。
「これ、いいかも」
 そのリボンを丁寧に、箱がゆがまない程度に力を入れて結わえる。
 結び目の位置を調整して、皺が寄っていないか最終点検。
 カードを添えて、紙バッグに入れ、それをまた大きな紙袋に入れて、終了。
「服よし、チョコよし、義理チョコよし。 明日の集合場所も確認済み!」
 あとは明日に備えて眠るのみ。


 絶対に負けないんだから!!


END


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