作戦名『イモ掘り』 |
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火の国の首都を挟んで木の葉隠れの里と反対側にある街の、その背後にある平らな山のふもとの農村が今回の任務の依頼主。 そこはサツマイモの産地として火の国でも有名で、毎年この時期になると木の葉隠れの里に依頼が入ってくる。 そう、今回の依頼はその名も『イモ掘り』。 村の農家全てがイモ農家で、しかも農地の70%がサツマイモの畑だったりするその徹底さは、毎年新任下忍がその面積の広さと翌日の筋肉痛を思って涙を流すという逸話まであるほどである。 毎年ひと班では1週間かかっても終らないことから、例年通り今年も合同任務となり、三班の下忍たちはそれぞれの担当区域にしゃがみこんで作業をしていた。 折角の合同任務だからと、下忍たちはいつもと違う組み合わせで任務についている中、畑の片隅で歓声が上がった。 「うおー、でけー!!」 ひとり大仰な声を上げるのはナルト。 その声につられてその手元を覗き込んだのは今日だけチームメイトのチョウジとヒナタ。 「コレってば、絶対この畑で一番でかいってばよ!!」 両手で掲げるそれは、その言葉に違わずでかかった。 縦横奥行き全てが隣で拍手しているチョウジの顔以上あった。 この畑どころかこの村、もしかしたらこの国一番の大きさかもしれない。 「す、すごいね、ナルトくん……」 ナルトを挟んでチョウジの反対側にいるヒナタは顔を赤らめてナルトの功績をたたえる。 「美味しそうだなぁ」 ズレているようだが、これがチョウジ精一杯の誉め言葉であることは、ナルトもヒナタも知っていた。 「へへへ、これでオレたちが一番だってばよ!!」 いつの間にかナルトの中ではチーム対抗の競争になっていたらしい。 「そ、そうだね……」 ヒナタもそれを訂正することなく、相槌を打つ。 ナルトチームの担当になったアスマ上忍もナルトの頭を撫でて、偉いぞ、と笑っている。 「オレって、凄いってばよ!?」 誉められたことで、照れながらもナルトのやる気は倍増。 ナルトチームの作業スピードはさらに上がった。 離れた場所では、紅上忍担当のキバ・いの・サクラチームは3人揃ってナルトの幼稚な行動を馬鹿にし、カカシ上忍が担当するサスケ・シノ・シカマルチームは内心はともかく外見上は無言で黙々と作業を進めていた。 昼休憩を挟んで夕刻、日が山に沈み始める頃まで続いたイモ掘り作業は、その日のノルマを大幅に越えていた。 村の一角にはそれぞれのチームが掘り出したイモが山と積まれ、下忍たちの労働が一目でわかる状態になっていた。 「やっぱ、オレたちが一番だってばよ!!」 3つの山の中で一番大きな山は、ナルトの言葉通りナルトチームであった。 大きなものから小さなものまで余すところなく掘り出し、積んであるので、山には隙間がない。これはチョウジが大きいもの以外をみようとしないナルトに、小さくても美味しいよ、と告げたためである 。 キバチームはキバの乱雑な扱いで傷ついたイモがところどころあり、サスケチームはそれぞれがマイペースに行なった結果、平均的な数となった。 「お疲れさん、だな」 咥えタバコを左手に、右手でナルトの頭を乱暴に撫でるアスマ上忍。 撫でられて嬉しそうに笑うナルト。 ナルトのとなりで照れたように顔を赤らめて俯くヒナタ。 お菓子を食べられないのに満面の笑顔のチョウジ。 その後ろでは無表情がいくつかと、不満げな面々が続く。 「どうしてなのよー!」 いのがイモの入った袋を持つ手と反対側で拳を振り上げる。 その横でサクラとキバとカカシ上忍がそれぞれうなずく。 紅上忍は苦笑し、シノとサスケは我関せず。シカマルはめんどくせえと呟いた。 「何がだってばよ?」 いのの雄叫びを聞いたナルトが不思議そうに振り向く。その手には後ろの8人の倍以上の大きさの袋を両手で抱えている。 「どーしてあんたたちだけがそんなにもらえるのよ!!」 いのの怒りの焦点は、お礼として貰ったイモの量の差についてだった。 「どうしてって…」 戸惑うナルトの視線は隣を歩くヒナタとチョウジとアスマ上忍の間を行き来して、いのに戻ってきた。 「そういう風になってるんだってばよ?」 小首をかしげて困ったように答えるナルトに、ヒナタとチョウジが同意する。 「だから、そーゆーふうって何なのよ!」 怒り心頭に達してますと言わんばかりの大声に、ナルトは肩をすくめる。 「前からそうなんだよ」 こらこら、と割って入ったのはアスマ上忍だった。 「班分けして、一番多く掘り出した班だけ礼を上乗せするってな」 まあ、依頼書には書いてないがな。とさらりと答える。 「あの依頼は毎年新人下忍を指定していてな。下忍の新人といえばアカデミー出の子供だか、競争させればそれだけ成果が上がると踏んだんだろうな」 実際、アレを始めてからそれ以前の年よりもかなり成果が上がってるらしいしな。と笑いながら種明かしをするアスマ上忍の腕にもナルトと同じサイズの大きな袋がある。 「だからって、何でお前まで貰ってるのよ」 カカシ上忍はそれでも不満たらたらだ。 「俺がナルトのチームを担当していたからな」 アスマ上忍はフフンとカカシ上忍を鼻で笑う。 「つまり、アスマは初めから知っててやったて事?」 呆れたように言うのは紅上忍。彼女も初耳だったらしい。 「そーゆーこった」 勝者の余裕でアスマは笑う。なにせ、この村のサツマイモは木の葉の里でも美味で有名なのである。それを無料で、しかもかなりの量を入手できるのなら多少の駆け引きも辞さないのである。 アスマをしてそう思わせるほど、そのサツマイモは美味しいものだった。 「はっ、ウスラトンカチはあんたに踊らされたってことかよ」 それまで無言でついてきていたサスケが口を出した。表に出してはいないが、どうやら負けたことがよほど悔しかったらしい。 「違うよ」 反論したのはナルトではなく、笑顔のチョウジだった。 てっきりナルトが盛大に反論してくるだろうと予測していた面々は出端をくじかれた形になって、黙り込んだ。 「ナルトも僕もヒナタもアスマも、前から知ってたよ」 静まり返った周りに、実はよく通るチョウジの声が響いた。 「アスマはともかく、なんで知ってんのよー!!」 混乱しているのか担当教官を呼び捨てにして、いのが叫ぶ。周りも同じ事が言いたいらしく、無言でうなずいている。 「あ、あのね。ネジ兄さんたちもね、去年、この任務、受けたの……」 「こないだ、ヒナタとネジと買い物してる時に、チョウジと会って、その話になったんだってばよ!」 ナルトがニシシと笑って話を受ける。 「アスマ先生も、前にここのおイモが美味しいっていってたから、僕たちもがんばったんだよ」 食欲丸出しのチョウジに、全員が納得した。 「事前のジョーホー収集も、忍のキホンだってばよ!!」 最後のナルトの言葉に、ナルトチームの3人は満更でもない顔で肯定する。 ドベでドジでおちこぼれのナルトの言葉に、負け組みは硬直した。 「さっさと帰るってばよー!!」 悪巧みを成功させた時のいたずらっ子の笑顔で、ナルトを筆頭に勝利者チームは走り出した。 追いかけるのは硬直の解けた負けチーム。 任務が終れば、目指すは木の葉の里。 後ろでは、上忍3人が子供たちの追いかけっこを微笑ましそうに見守っていた。 その日の夕方、重そうな袋を両手で抱えて走る子供と、それを追いかける子供たちが、火の国内の木の葉隠れの里へ向かう道で見かけられたという。 うずまきナルト、日向ヒナタ、秋道チョウジ、猿飛アスマ。 作戦名『イモ掘り』 作戦成功! 終
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