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とりっく おあ とりーと!!

 ハロウィン。
 それは遠い異国の宗教イベント。
 ハロウィン。
 それは子供のためのお祭り。


 10月31日。
 木の葉隠れの里の下忍3班の子供たちは浮かれていた。
 木の葉の里ではそれほど有名ではないが、ハロウィンは子供のお祭りである。
 先日、下忍3班は突如くの一たちの発案でハロウィンのお祭りが執り行われることとなった。
 いつものように下忍任務を終らせて、今日はどこにも立ち寄らずに即帰宅。
 任務でかいた汗と泥をシャワーで落としてさっぱりして。
 風呂から上がって乱暴に頭を拭き、あらかじめシズネに協力してもらって作成した衣装に袖を通す。
 シズネの指導のもとナルトでもひとりでもなんとか作れた簡単な衣装。
 裾や生地の端々の処理が甘いのはご愛嬌。
 妙なところで知識の広いシズネと、そのために時間を割いてくれた綱手に感謝して。
 髪が完全に乾く前に時間が来たので、空の布袋を持って家を出た。


 アカデミーの校門前に着いたのは集合予定時刻の5分前。
 門の前には7班はサクラとサスケ、8班でシノとヒナタ、上忍のアスマと紅。
 大体時間前に必ず来ている面々。
 ナルトが着くとほぼ同時にいの、シカマル、チョウジの3人組が到着して、急に場が賑やかになる。
 時間ギリギリでキバが走りこんできて、予定人数が揃う。
「で、やっぱりカカシ先生は来ないのね」
 サクラがわかりきっていたと諦めの言葉いうと。
「フン。ウスラトンカチが」
 サスケが呆れを通り越して蔑みの体で吐き出す。
「お前たちも大変だな」
 アスマと紅が同情すれば。
「そうだってばよ!」
 とナルトが憤慨する。
 子供たちはそれぞれ凝った衣装で浮き足立っており、早々に上忍ふたりは同僚を見捨てることにした。
「時間がもったいないからな。お前たち、そろそろ回り始めろ」
 アスマの一声で子供たちから歓声が上がる。
「楽しみ、だね…」
「いっぱい貰えるといいなぁ」
 子供たちがこれから回るのは子供たちの家と教師宅。
 正確には、ナルトとサスケ以外の下忍の家とイルカ宅。
 上忍たちは保護者として引率。
 子供たちは最後のひとりの引率者を待つことなく出発した。


 1軒目は日向家。
 大きな門構えと何処までも続きそうな塀に呆気にとられる子供たち。
 同じ旧家で大きな家に慣れてるサスケとそこが自宅のヒナタが門を叩く。
「とりっく おあ とりーと!!」
 子供たちのたどたどしい異国のおまじない。
 優しそうなヒナタの母が顔を出して、きれいな和菓子を皆にくれた。
 2軒目は犬塚家。
 家の前庭の大きな檻とその中の犬たちに吼えられて、子供たちはびくびくしながら家の戸を叩く。
「とりっく おあ とりーと!!」
 吼える犬たちに負けないくらいの大声で。
 ドアを開けたキバの母は豪快に笑ってお菓子を投げてきた。
 3軒目の春野家が予想通りの普通の家で、みんな内心ほっとして。
 春野母の手作りお菓子を受け取った。
 4軒目、5軒目、6軒目。
 山中家、奈良家、秋道家と続けて通い。
 7軒目の油女家は山の中に在って、動きにくい衣装でがんばる子供たち。
 最後の8軒目にアカデミー教師のイルカ宅。
「お前たち、まだまだ子供だな」
 笑いながらも人の良い教師は、それぞれにひとつずつお菓子を手渡してくれた。


 全部の家を回り終わってみたら、手持ちの袋はみな満タンで。
 子供たちはみんなご満悦。
 アカデミーに戻ってきたら、そこにはひとりカカシ上忍。
「みんな遅いぞー」
 あははと笑う上忍に、サクラとサスケとナルトが呆れ半分怒り半分。
「もう全部回ってきました!」
 サクラの怒りの発言に、サスケとナルトと他班の下忍たちがそれぞれ頷く。
 しばしの沈黙。
「……え?」
 睨みつけるサクラに目を見開いたカカシ。
「遅れる先生が悪いんだってばよ?」
 にこにことこっそり毒を含んでナルトが吐いて。
「時間厳守が基本だろ」
 サスケがニヤリと口角をあげた。
「…………え?」
 ぽんとカカシの肩を叩くアスマと紅。
 子供たちは既にカカシから興味を無くして、それぞれ今日の戦利品を漁っている。
 7班の3人も怒りで無視を決め込んで。
「お前ら、そろそろ遅いからお開きにするぞ」
 凍り付いてるカカシをよそに、アスマが声を張り上げた。
「まだいいでしょー?」
「そうだぜ、まだ早いじゃねーか」
 子供たちが口々に、遊び足りない騒ぎ足りないとわめいても。
「明日も休みじゃないでしょう?」
 紅が笑顔ひとつで釘をさした。
「めんどくせぇ……」
「…仕方あるまい」
 動かせない現実に、仕方が無いからと子供たちは諦めて。
 みんなで目配せし合って、一言。
「とりっく おあ とりーと!!」
 全員揃って上忍たちに両手を差し出した。
 子供たちの息の合った仕草にアスマと紅は苦笑して、それぞれの手の中にお菓子の袋を手渡した。

 子供たちはそれぞれ帰路について。
 ナルトもひとり自宅へと足を向けた。


 自宅に戻って、ナルトはベッドにころがった。
 両手には溢れるほどのお菓子の山。
 なにより一番嬉しいものは、みんなと一緒に笑い合えた今日の記憶。
「みんなでまた、やりたいな…」
 お菓子いっぱいの袋を抱きしめて、くすくす笑った。

 甘い香りがあふれる部屋。
 きっと今日見る夢は、甘いお菓子と優しい笑顔いっぱいの夢。



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