桜 春には見事な花が咲き誇る、火の国でも有名な桜の名所のひとつ。 小春日和の暖かな冬の日、木の葉隠れの里の下忍7班のメンバーは3人揃ってそこを歩いていた。 「すげーってばよ!!」 ナルトは満開の桜の下を走りだす。 桜並木で有名な道は今、春の姿を再現するかのように桜吹雪が舞っていた。 「ねえ、ねえ、サクラちゃん」 金色の頭に桜の花びらをたっぷりと乗せたナルトがサクラの方に駆け寄ってきた。 「あのさ、あのさ。桜って秋にも咲くんだってば?」 オレってば、春だけの花だと思ってた、と無邪気に笑いかけるナルトに、サクラは溜息をついた。 「はぁ。何言ってんのよ、そんな訳ないじゃない」 サクラは桜を見上げる。 「狂い咲きって言うのよ」 「狂い咲き?」 サクラの言葉をオウム返しに聞き返して、ナルトはサクラと同じ方向を見る。 視線の先にはもう一人の同僚、うちはサスケ。 サクラの思慕の対象で、お互い憎からず想い合っている相手である。 「狂い咲き。時節外れに花が咲くことを言うのよ。桜は春の花だから、季節外れのいま咲いてるのはおかしいでしょう?」 視線の先で、サスケがひとりこちらに向かって歩いてくる。 「最近暖かかったから、ここの桜も勘が狂ったのね」 そう言って笑うと、サクラはサスケの名を呼んで走っていった。 桜の花びらの舞い散る中、同じ名前の少女は恋する少年を思って花を咲かせる。 瞳にただひとりの少年を写して、あでやかに微笑む。 桜を見送りひとり残されたナルトは、手のひらに落ちてきた薄紅色の花びらにひっそりと哂う。 普通と異なることを指して『狂う』というのならば。 ならば、オレの想いも狂っているのかもしれない。 彼女の恋は春の花。 暖かい世界でほころぶ希望の花。 けれどオレのこの花は、届かぬ想い。 叶わぬ望みを生み出す花。 君が笑うと、オレは幸せを感じるんだ。 たとえ、その微笑みがオレ以外のためだとしても。 届かぬ想いのこの花は、狂い咲く桜のように、静かに静かに咲き誇る。 終
|
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||