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「もうちょっとだけ、一緒にいようよ」


 初めて見たのはアカデミーに入ってすぐ。
 担任の中忍教師が校舎内を案内してくれた時。
 校舎裏を通って裏山にある第一演習場に行く途中だった。
 視界を過ぎたのは光。
 きらきらと陽の光を反射するそれに目を奪われた。
 そして出会った。
 いま目の前にいる相手と。


 変わらないと思う。
 あの時も、今も。
 思い出して少し笑った。
「…なに笑ってるんだってば?」
 窓越しに外を眺めていたのに、いつのまにか前を向いて私を見てる。
 そんなにニヤニヤしてたかな?
「ちょっと思い出したんだ、初めて会った時の事」
 ケーキをつついて、ひとくち食べる。
「ああ、テンテンがアカデミーの校舎裏で迷ってて?」
 疑問を持った時に首をかしげる癖も出会った頃から変わっていない。
 そういう仕種は可愛いと思う。
 男の子に可愛いって言うのも何だけどね。
 本当に変わらない。
「迷ってないわよ、皆に置いていかれただけ」
 本当は、ナルトの髪が凄く綺麗で見とれていたら置いていかれたんだけど。
「あの時が最初だったのよね」
 最初に会って、最初に名前を教えあった。
 それからずっとこんな関係。

 変わらない貴方。
 変わらない私。
 変わらない私たち。

 ああでも、もう前と変わった所もあるか。
 身長は、もう私より頭半分高くなってるもんね。
「ねえ」
 店を出て、前を歩くナルトの手を捕まえる。
「もうちょっとだけ、一緒にいようよ」
 そう言ったら、ナルトは目を見開いて振り向いた。
「テンテンがそんな事言うなんて、珍しいってば」
「そう? たまにはいいじゃない?」
 そう言って、手を繋いだまま隣を歩く。
 変わってしまうのは仕方がないけど、もう少しだけ変わらないでいて欲しい。
 でも、前に進みたい気持ちもあるから。
 だから、ほんの少し我侭を言ってみる。


 貴方の隣のこの場所に、いてもいいですか?



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